【016】ベルンカステル=クースへ。第一章の終着駅

フランクフルトから北西側の地域をだいたい紹介し終わったところで、第1章とします。

そしてその最後にどうしても紹介したい町があります。

ベルンカステル=クース(Bernkastel-Kues)。

フランクフルトからコブレンツで乗り換え、さらにヴィットリッヒへ。

そこからバスに乗って向かいます。

所要時間はフランクフルトから約3時間45分。

近くはありません。かなり遠いです。

それでも、ここまで来る価値のある町です。

ベルンカステル=クースは、それほど大きな町ではありません。

でも旧市街に入ると、

どこを見ても美しい。

木組みの家がただ並んでいるのではありません。

狭い路地。

傾いた家。

レストランの前には、さまざまなテラス席が並んでいます。

歩いている人も多い。写真に人があまりいないのはだいたいが朝です。

これだけの人が訪れるということは、それだけ人気のある町なのでしょう。

でも実際に歩いてみると、その理由が分かります。

どこを見ても絵になる。

木組みの家をたくさん巡ってきましたが、ベルンカステル=クースはやっぱり特別です。

今日泊まるホテルは、

ドクター・ヴァインシュトゥーベ(Doctor Weinstube)。

なんともベルンカステル=クースらしい名前です。

「Wein」はワイン。

では「Doktor」は?

ワインがお医者さん?

ワインは薬という意味なのでしょうか。

この町には、昔、病気になった偉い人がここのワインを飲んで元気になったという伝説があるそうです。

ワインの町ならではの話です。

ホテルに到着。

ところが、

レセプションが見つかりません。

どこ?

例によって例のごとく、ここも地上階はレストランです。

だったら、とりあえずレストランへ入ってみましょう。

すると民族衣装を着た店の女性が、笑顔で迎えてくれました。

そして驚いたことに、

私が名乗る前に、私の名前を呼んでくれたのです。

えっ、なんで分かったの?

よっぽど日本人のお客さんが少ないのでしょうか。

理由は分かりません。

でも、なんだかとてもうれしかった。

そのまま部屋まで案内してくれて、いろいろ説明してくれました。

たったそれだけのことなのですが、旅先でこういうふうに迎えてもらえると、その町まで好きになってしまいます。

ベルンカステル=クースが、ますます好きになりました。

ここはワインの名産地。

だから町を歩いていると、あちこちで葡萄のモチーフを見かけます。

建物の装飾。

看板。

お店。

木組みの家だけを見るのではなく、こうした小さなモチーフを探しながら歩くのも楽しい。

そして、さらに歩いていくと――

今度は噴水がありました。

そこにいたのは、

2頭の熊の像。

ベルンカステルの「ベルン」は熊

なるほど。

ベルンカステルの「ベルン」は、熊。

町の紋章にも熊がいます。

そう思って周りを見ると、熊は噴水だけではありません。

お店の軒先などにも熊の姿があります。

葡萄と熊。

そして木組みの家。

小さな町なのに、「この町らしいもの」がたくさんあります。

こんなところまで来られるようになった

ベルンカステル=クースまで来て、ふと思いました。

ずいぶん遠くまで来たなあ。

フランクフルトから約3時間45分。

列車を乗り継ぎ、最後はバス。

ドイツ旅行を始めた頃は、ICEに乗って大都市から大都市へ移動していました。

それが普通列車に乗るようになり、

1時間に1本しか列車が来ない町へ行くようになり、

鉄道のない町へバスで行くようになった。

そしてとうとう、日本ではあまり知られていない、こんなところまで一人で来られるようになりました。

3年以上かかりましたがちょっとくらい、自分を褒めてもいいでしょう。

木組みの家を見たい。

その気持ちだけで、ドイツの地図の上をどんどん進んできました。

そして、この町の名前を愛犬につけました

2025年、最後のドイツ旅行を終え、それからしばらくして、我が家に一匹の犬がやってきました。

黒いトイプードルです。

名前を何にしよう。

いろいろ考えました。

そして思い出したのが、この町でした。

ベルンカステル=クース。

熊の紋章を持つ、あの美しい町。

そこから、

「ベル」

と名付けました。女の子なので熊じゃなく、美女になっても欲しいし。

ドイツを旅して、木組みの家を追いかけて、列車を乗り継ぎ、バスに乗って、ようやくたどり着いた町。

その町の名前が、今では毎日呼ぶ名前になりました。

「ベル!」

そう呼ぶたびにベルンカステル=クースを思い出すわけではありません。

もうベルは、ベルです。

でも名前の始まりをたどっていけば、ドイツのずっと西にある、小さな美しい町にたどり着きます。

そして、もうひとつ。

ベルンカステルの町には熊がいました。

我が家にやってきたベルも、

真っ黒で、小さくて。

そのころニュースで見る、子熊にちょっと似ていました。


木組みの家を巡る旅 第1章・完

フランクフルトから始まり、小さな町をひとつずつ巡ってきた木組みの家の旅。

いろいろな町を見ました。

いろいろな列車に乗りました。

バスにも乗れるようになりました。

長ーい坂道も上りました。

そして最後にたどり着いたのが、ベルンカステル=クース。

旅の途中で出会った町の名前が、その後の私の暮らしにつながりました。

これで木組みの家を巡る旅、第1章はおしまいです。

でも、ドイツにはまだまだ木組みの町があります。

第2章へ続きます。

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