【007】 マインツへ。朝市とシャガールの青、そして最後に手を振ってくれた人
マインツはフランクフルト国際空港から見ると、フランクフルトとは反対方向にあります。
でも、空港からの移動時間はそれほど大きく変わりません。
だから、
「帰国前の最後の一泊をマインツにする」
というのもいいと思います。
フランクフルトは何度も行った。
最後にもう一つ違う街を歩いてみたい。
そんなときにも使いやすい街です。
まずはマインツ大聖堂へ
マインツの街を歩くなら、やはり最初はマインツ大聖堂。
ロマネスク様式の大きな大聖堂です。

マルクト広場へ行くと、その広場を見下ろすように建っています。
大聖堂そのものも立派ですが、私はやっぱり広場と一緒に見る景色が好きです。
ドイツの街では、
教会があって、
その前にマルクト広場があって、
周囲にお店やカフェがある。
こんな素敵な建物もあります。

それだけなのに、街ごとに全然雰囲気が違います。
朝市でアメリカンチェリーを買う
マインツのマルクト広場では、朝市も開かれます。
火曜日、金曜日、土曜日に開催されているようです。
これが楽しい。
野菜や果物など、本当にいろいろなものが並んでいます。
市場を見ると、
何か買いたくなる(笑)。
私が買ったのは、アメリカンチェリー。
これならホテルへ持って帰ってもいいし、列車の中でも食べられます。
鉄道旅行のおやつにはぴったりです。
でも問題は買い方。
ドイツ語なんて話せません。
そんなときは、
欲しいものを指さして、
「Das, bitte.(ダス ビッテ)」
これで十分。
「これ、お願いします。」
あとはお金を払って、
「Danke schön!」
ありがとうは忘れずに。
長い文章なんて話せなくても、これで買い物はできます。
海外旅行は、案外そんなものです。
マインツで絶対に見てほしい「青」
そしてマインツで、もう一つ忘れてはいけない場所があります。
聖シュテファン教会。
ここには、シャガールが手がけたステンドグラスがあります。
マルクト広場からだと坂道を登って15分ほど。
教会の中へ入ると、
青。
とにかく、青。

外の光がステンドグラスを通して教会の中へ入り、空間全体を青く染めています。
そこに浮かぶのが、シャガールらしい、ふわりとした人物や絵柄。
光を浴びて輝いています。
「ステンドグラスを見る」というより、
青い世界の中に自分が入ってしまった
ような感じです。

写真には残せても、感動までは残せない
シャガールのステンドグラスは、スイスのチューリッヒでも見たことがあります。
でも、そちらでは写真撮影ができませんでした。
マインツでは写真を撮ることができました。
これはうれしい。
もちろん、たくさん撮ります(笑)。
でも、あとで写真を見ると、
「違うんだよなあ」
と思います。
写真が悪いわけではありません。
ちゃんと青い。
ステンドグラスも写っています。
でも、自分がその場に立って、教会全体が青い光に包まれているのを見たときの感動までは写らない。
やっぱり実物にはかないません。
それでも写真は撮っておきたい。
何年か経ってその写真を見れば、
「あの青、きれいだったなあ」
と、そのときの記憶を呼び戻してくれます。
そしてホテルで事件発生
さて。
マインツではホテルにも泊まりました。
朝になって朝食会場へ行きます。
朝食付きで予約してありますから、いつものように入ろうとすると……
「朝食は付いていません」
と言われました。
え?
やばっ。
私、予約を間違えた?
海外のホテルを自分で予約していると、こういう瞬間は本当に焦ります。
朝食なしのプランを取っちゃった?
でも、朝食付きだったはずなんだけどなあ。
「ちょっと待ってて」
朝食会場にいた男性が、
「ちょっと待ってて」
と言いました。
……たぶんそう聞こえた(笑)。
もちろん英語もドイツ語も分からないので、本当にそう言ったのかは分かりません。
でも、
「ここで待っていればいいんだな」
ということは伝わりました。
待っていると、その男性。
ホテルの予約サイトへ電話をして、確認してくれたんです。
そして、
朝食付きで予約していたことが確認できました。
よかったー!
無事に朝食を食べることができました。
それにしても、この人。
本当に優しい。
「こちらでは朝食なしになっています」
で終わらせることだってできたと思います。
でも、わざわざ確認してくれました。
もう一泊。でも、あの人がいない
その日は朝食を食べたあと、いったんチェックアウト。
ホテルに荷物を預けて出かけました。
そして、最終日にもう一泊。
今度はちゃんと朝食付きになっています。
翌朝、朝食会場へ行きました。
でも……
昨日の男性がいない。
せっかくなら、もう一度会いたかったな。
昨日はありがとうございました。
もちろん、そんなことを英語やドイツ語で上手に伝えられるわけではありません。
でも、
「Danke schön」
くらいは言いたかった。
ちょっと残念でした。
最終日の朝は、スーパーへ
飛行機の時間までまだ時間はあります。
そんなとき私は、スーパーマーケットへ行きます。
ドイツのスーパーは朝7時ごろから開いているところもあります。
パン屋さんも朝が早い。
だから帰国日の朝でも、最後のお買い物ができます。
スーパーマーケットというのは楽しいんです。
観光客向けのお土産屋さんではなく、ドイツの人が普通に買っているものが並んでいます。
お菓子。
調味料。
食品。
日用品。
「これ日本にないなあ」
なんて見ていると、最後まで荷物が増えます(笑)。
買い物を済ませて、ホテルへ戻りましょう。
……と思ったら。
途中にパン屋さんがありました。
パン屋さんで見つけたのは、パンではありません
何気なくお店を見ると、
かわいい!
見つけてしまいました。
エコバッグです。
しかも、そのパン屋さんのエコバッグ。
バッグいっぱいに、いろいろなパンが描かれています。
ドイツといえばパン。
これはかわいい。
欲しい。
でも……
パンはいらないんだよなあ(笑)。
今からホテルへ戻って、荷物をまとめて帰国します。
ここでパンを買っても仕方ありません。
でも、
エコバッグは欲しい。
どうしよう。
パン屋さんに入って、パンを買わずにエコバッグだけ買う?
しかも一枚ではありません。
二枚欲しい。
まあ、いいか。
入りましょう(笑)。
「パンじゃなくて、これを二つください」
お店へ入ると、店員さんが笑顔で迎えてくれました。
申し訳ない。
こんなに美味しそうなパンが並んでいるのに、私が欲しいのはパンではありません。
指をさして、
これ。
そして指を2本。
二つ。
言葉で説明できなくても、ジェスチャーならなんとかなります。
「このバッグを二つ欲しい」
無事に伝わりました。
そして、
エコバッグ2枚、購入成功!
大満足です。
パンがたくさん描かれた、ドイツのパン屋さんのエコバッグ。
こういうものって、普通のお土産屋さんでは買えません。
自分で街を歩いて、たまたま見つけたから買えたもの。
私にとっては、こういうお土産のほうがうれしかったりします。
……やっぱりパンも買えばよかった
エコバッグを持って店を出ます。
かわいい。
買えてよかった。
大満足。
そして少し歩いてから思います。
「やっぱりパンも買えばよかったな」
(笑)。
せっかくパン屋さんに入ったのに。
せっかくドイツ最後の朝だったのに。
エコバッグだけ買って帰ってきてしまいました。
でも、それも旅の思い出。
今でもそのバッグを見ると、
マインツの朝。
パン屋さん。
笑顔の店員さん。
そして、
「パンも買えばよかった」
まで一緒に思い出します。
最後に、振り返ったら
さてすべてを終えて、荷物をまとめます。
チェックアウト。
ホテルを出る前に、なんとなく朝食会場のほうを振り返りました。
すると……
いた!
昨日、助けてくれた男性です。
そして向こうも私に気づきました。
すると、
手を振ってくれた。
もちろん私も、
大きく手を振り返します。
言葉なんてありません。
昨日はありがとう。
朝食を食べられて助かりました。
また会えてうれしい。
さようなら。
たぶん、私が大きく振った手には、全部入っていたと思います。
朝から、うれしい一日になった
ホテルを出ながら、なんだかうれしくなりました。
たったそれだけのことです。
手を振ってもらった。
手を振り返した。
それだけ。
でも、旅が終わって何年経っても覚えているのは、案外こういう瞬間です。
マインツには立派な大聖堂があります。
市場も楽しい。
シャガールのステンドグラスは、今でも思い出せるほど美しい青でした。
でも私がマインツを思い出すとき、
最後に手を振ってくれた、あの人のこともきっと一緒に思い出します。
ドイツ語が話せなくても、
英語が話せなくても、
「ありがとう」は伝わる。
コッヘムでも。
そしてマインツでも。
私はドイツで、本当にたくさんの人に優しくしてもらいました。
それもまた、
私がドイツを好きな理由です。
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